タイのEV市場:急成長と中国勢の台頭、新興メーカー・NETAの躍進
先日、約3週間タイに滞在しました。滞在先はパタヤとチェンマイ、バンコクの3都市です。この3都市を巡り気付いたことは、タイは日本以上にEVが浸透しているということ。実際のデータでも近年のタイのEV市場は著しい成長を遂げており、2023年には約7万6千台のEVが販売されたようです。これは前年比約3倍の増加であり、ASEAN地域の中でも最もEV普及率の高い国となっています。
タイに訪れた人の多くは分かっていると思いますが、ガソリン車に関しては日本メーカーが圧倒的なシェアを誇っています。タクシーはもちろん、Grabなどのライドシェアで使われている車の多くが日本車です。しかし、EVに関しては日本の存在感はありません。代わりに目立っているのが中国勢です。
タイのEV市場を牽引する中国勢メーカー
2023年のタイにおけるEV販売台数上位5位は以下の通りです。
- BYD(中国)約2万7千台
- MG(中国)約1万8千台
- ORA(中国)約1万2千台
- GWM(中国)約8千台
- Tesla(米国)約6千台
日本人の感覚ではEV=Teslaのイメージが強いですが、タイではEV=中国という構図になっています。実に上位4メーカーで7割以上のシェアを誇っています。特にBYDは圧倒的な販売台数を誇り、タイにおけるEV市場を席巻しています。
中国勢台頭の背景
中国勢メーカーがタイ市場で台頭している背景には、以下の要因が挙げられます。
低価格 | 中国製EVは日本製や欧米製EVと比べて価格が安い |
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充実したラインナップ | 国勢メーカーは、様々な車種のEVを販売している |
タイ政府の支援 | タイ政府は、EV普及を促進するため補助金などを支給している |
中国企業の積極的な投資 | 中国企業はタイ国内にEV生産工場を建設したり、販売網を拡大したりしている |
タイの経済は日々成長を続けており、国民の所得も上がり続けています。しかし、それでもTeslaは高額であり、日本人ですらなかなか手が届く車ではありません。それに対して、中国EVは低価格戦略を貫いており、GrabやBoltのようなライドシェアで日銭を稼ぐタイ人でも購入できる価格で提供しています。
また、低価格で提供できるが故に、日本や米国のメーカーよりも多様なラインナップを用意できています。購入者からすれば選択肢が多い方が嬉しいですよね。
今後の展望
タイ政府は2030年までに国内の自動車生産に占めるEVの割合を30%まで引き上げるという目標を掲げています。今後もタイのEV市場は成長が続くと予想され、中国勢メーカーのシェアがさらに拡大していく可能性が高いです。一方、日本勢メーカーは価格競争力やブランド力などで中国勢に対抗していく必要があります。
ガソリン車では日本メーカーの知名度は高いため、重要なのは価格競争力とラインナップの多様化が課題でしょう。
NETAという中国メーカー
今回のタイ滞在で一番気になったのは中国EVメーカーのNETAです。ライドシェアで使われているEVの多くはNETAであり、価格はもちろん、デザイン性や機能性においても目立った存在だと感じました。
2023年12月時点のタイにおけるBEV(Battery Electric Vehicle)販売台数シェアでは、NETAは18.5%を占め、2位に躍進しました。この躍進の背景には、以下の要因が挙げられます。
低価格 | NETAのEVは中国製EVの中でも特に低価格で販売されています。例えば、主力モデルであるNETA Vは約55万バーツ(約165万円)で販売されています。これは同価格帯の競合車と比べて20%以上安い価格設定です |
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充実した装備 | 低価格ながら、360度カメラや自動駐車機能などの先進安全装備を標準搭載するなど、装備も充実しています。 |
タイ政府の補助金対象 | NETAのEVはタイ政府のEV普及促進策である補助金の対象となっています。補助金を受けると、車両価格はさらに10万バーツ(約30万円)程度安くなります。 |
積極的なマーケティング | NETAはタイ国内で積極的に試乗会や展示会を開催するなど、マーケティング活動を展開しています |
Boltを使って乗車したタクシーがNETAだったので、ドライバーとその車について会話をしました。車の性能はもちろんですが、やはり日本勢や米国勢と比べて価格が安いことが購入の決め手になったようです。個人的には内装が先進的で、乗り心地も快適だと感じました。
NETAのウェブサイトを見ると、言語対応しているのは中国語とタイ語だけでした。それだけNETAはタイ市場を強く意識していることが分かります。
NETAの今後の展望
NETAは今後もタイ市場でのシェア拡大を目指し、新モデルの投入や販売網の拡大を進めていく予定です。特に、2024年後半には、高級SUVモデルのNETA Sをタイ市場に投入する計画です。NETA Sは中国国内でヒットしているモデルであり、タイ市場でも人気が出ると予想されています。
このNETA Sという車、めちゃくちゃかっこいいです。かなり売れるのではないかと予想できます。
もし、NETAのような中国EVが日本市場に参入してきたら、かなりのシェアを奪われると考えます。できればTeslaという日本人が多いとは思いますが、今の為替や所得を鑑みるとなかなか手が出ないでしょう。一方、中国EVであれば、高性能でこれだけのビジュアルの車が低価格で手に入ります。一昔前の中国車のイメージは完全に払拭されるでしょう。
日本企業はスマホで失敗し世界に進出する機会を逃しました。同じようなことがEVで起こらないことを願っています。
タイに訪れた際は、ぜひどんなEVが走っているのか注目してみてください。
参考データ
- ジェトロ「中国自動車メーカーによるタイへの大規模投資拡大、EV生産本格化へ」
- アライズ「タイ自動車市場〜潮目が変わった2023年と日系メーカーの挽回策〜」
- YCP Solidiance「東南アジアのEV革命をリードする:タイEV市場徹底解説」
- NNA ASIA「東南アジアのEV市場、タイが首位を独走」