【中小企業DX】取組例(有限会社ゑびや@三重県伊勢市)

ビジネス

前回はDXの概念をご紹介しましたが、今回は具体的な事例をご紹介します。1件目は三重県伊勢市の伊勢神宮の近くで飲食店を営む有限会社ゑびやの事例です。従業員50名ほどの企業がDX導入によりどのように変化したのか、「デジタルガバナンス・コード」実践の手引きの中からポイントをピックアップします。

会社名 有限会社ゑびや
本社所在地 三重県伊勢市
業種 飲食業
従業員 50名
URL https://www.ise-ebiya.com/
 取組前
  • 伊勢神宮の近くという立地にたよって営業
  • 提供メニューは独自性のないカレーやうどんがメインで客単価は800円
  • 毎日の売上管理は手切りの食券と手書きの記帳、計算はそろばんという状況
  • グルメサイトでの評価も2.86しかない
  • 会計や経理から受発注まですべてが紙や口頭で行われており、その把握のために必要な客観的なデータは全く無い状況
 取組後
  • 客単価は800円から2,800円へと3.5倍に、売上高は5倍に(グルメサイトの評価も3.5超に)
  • 来客数のAI予測により、毎日6升炊いて余らせていた米が2升になる等廃棄ロスを大幅に(70%以上)削減するとともに、炊きたてのご飯を提供できるように
  • 従業員の残業ゼロ、完全週休2日を達成
  • 自社向けに開発したデジタルツールを他者向けに展開する別会社を設立。コロナ禍においても飲食事業の売上減を補う売上
 取組内容
  • 生産性の向上が必須であると考え、生産性向上に必要な要素を分解
  • 粗利を増やすための付加価値向上、新規ビジネスモデルの開発及び従業員の労働時間等のコスト削減(効率性向上)に取り組む
  • エクセルを利用して社長自ら、手作業で地道なデータ記録からはじめた
  • 着実に経営に資するデータ収集、分析方法を模索し続けながら、数年をかけてゑびやの取組は進化
  • 自社開発した AIによる来客予測や、画像解析によるデータ収集、いつでも簡単に必要な情報が可視化できる BI ツール等へと変革
  • 経理や労務管理など、あらゆるバックオフィス業務を外注やクラウドサービスの活用により処理

この事例から勘と経験に頼った従来のやり方を踏襲するのではなく、データを活用することで新たなビジネスモデルをつくり、付加価値と効率を高めていくこと、そして経営者が取り組むべきこれらの課題解決に取り組むことが大切であることが分かります。

ただし、この事例の場合、社長である小田島氏の経歴がかなり影響しています。彼は大学卒業後、ソフトバンクというICTの最先端でキャリアを積んでいるため、このようなデータ活用に長けていたのでしょう。また、実家で社長業を継いだ後も三重大学で博士課程を修了するなど、継続して学ぶ姿勢があることも影響していると感じます。いずれにしても、社長自らが学び、現場で実践することがDX実現には必要なのでしょう。

伊藤泰行

京都市在住。 日本ソムリエ協会認定SAKE DIPLOMA(2018年度合格/No.2153)、SAKE検定認定講師。(社)日本ソムリエ協会正会員(No.29546)。大学卒業後は(株)マイナビに入社し約10年間、顧客企業の新卒・中途採用領域における採用ブランディング、クリエイティブディレクションを経験しました。いつまでもお酒が楽しめるように、毎年1回のフルマラソン完走を目標として健康な体づくりに励んでいます。

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