アパレル販売の新スタンダード。ネットでも店員の個性を生かす販売方法

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従来、アパレル販売においてはネット販売よりも店頭での接客を重視する傾向がありました。経済産業省によると「衣類・服飾雑貨等」のEC化率は2018年で13%で、家電や書籍などの4割ほどです。この理由として、アパレルに関しては実際に試着したり、生地の質感を触って確かめたいという生活者のニーズがあるからだと考えられます。それでもアパレルのEC化は確実に進んでいて、特に20代など若者においてはネットでアパレルを購入することに抵抗がなくなっているようにも思えます。

しかし、アパレルECは店頭での接客と切り離されて運営されているケースが多いようです。一般的に店頭のアパレル販売は店員ごとに売上が紐付いていますが、ECにおいては一元管理されていて店員の個性や能力を生かす場がありません。ファッションは商品単体ではなく、コーディネートが商品選びの基準になることが多く、そのコーディネートのセンスは店員ごとに異なります。同じショップの店員が同じ商品を使っても多様なコーディネートが生まれ、そのコーディネート次第で商品の売上が変わってきます。つまり、アパレルECにおいても店員の個性を生かす販売方法が重要なのです。

その販売方法を取り入れたITサービスを提供しているのが、2011年に設立されたバニッシュスタンダードの「STAFF START(スタッフスタート)」です。これは店員がECに投稿したコーディネート写真を見た消費者が、実際にその写真を経由して買い物したかどうかを集計・分析できるのが特徴です。簡単に言ってしまえば、今まで店頭で行ってきた売上管理を、そのままECでも実現できるサービスです。

月間7,900万円を売り上げるスタッフも

このサービスは既にアダストリアやビームス、オンワードなど名だたるアパレル企業が導入し、利用ブランド数は800を超えています。また、スタッフスタートを経由した衣料品の販売総額は2019年に412億円で、前年の3.1倍に伸びています。この数字を見れば分かるように、消費者はこのような店員の個性を生かしたサービスを望んでいることが分かります。

このサービスの良い点は、売れるコーディネート写真を投稿した社員を売上ベースで評価できることです。スタッフスタートの公式サイトに掲載されている1スタッフの最高売上高(月)は、なんと約7,900万円です。これだけの売上に貢献できるスタッフは企業にとって貴重な戦力ですので正当に評価しなければいけません。これを実現できるのがこのサービスの素晴らしい点です。

現在、中小企業もファッション関連のECに取り組むケースが増えていますが、運営方法・販売方法は従来と同じです。運営管理者がいて、カメラマンと一緒に商品写真を撮り、それを加工してECに掲載する。これは言い換えれば運営管理者のセンスにすべて掛かっている方法です。運営管理者のセンスが世の中のニーズとマッチしなければ売上は伸びません。今後はそのような方法ではなく、市場の多様性にマッチするような販売方法が必要なのではないでしょうか。

社内にそのような人材が居ない場合は、コーディネート写真を投稿することに特化したアルバイトスタッフを雇用してみてはいかがでしょう。売上は写真に紐付いて管理できるため、各スタッフに歩合給を与えることもできます。なんでもかんでも自社で完結するのではなく、外部の力を借りることもEC運営においては大切なことです。

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伊藤泰行

京都市在住。 日本ソムリエ協会認定SAKE DIPLOMA(2018年度合格/No.2153)、SAKE検定認定講師。(社)日本ソムリエ協会正会員(No.29546)。大学卒業後は(株)マイナビに入社し約10年間、顧客企業の新卒・中途採用領域における採用ブランディング、クリエイティブディレクションを経験しました。いつまでもお酒が楽しめるように、毎年1回のフルマラソン完走を目標として健康な体づくりに励んでいます。

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