【中小企業DX】DXとIT化の違い

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経済産業省は今年の4月に中小企業向けの「デジタルガバナンス・コード」実践の手引きを公開しました。今まで経産省が企業のDX推進のために取り組んできたことは大企業が主体であり、そのような取り組みや事例は中小企業が参考にしにくい状況でした。この状況を変えるために取り組んだのが今回の「デジタルガバナンス・コード」です。中小企業に特化した内容になっているため、参考になることが多いと感じます。そこで今回からはこの「デジタルガバナンス・コード」の中からポイントになる情報をピックアップしてご案内します。

 そもそもDXとは何か

初回はDXに関してです。DXとはDigital transformation(デジタル・トランスフォーメーション)の略です。たまにDXのことをデラックスと呼ぶ人がいますよね。間違っていませんが、ここでは上記DXとしてお話します。経済産業省は「『DX推進指標』とそのガイダンス」の中で次のように定義しています。

DX は、本来、データやデジタル技術を使って、顧客視点で新たな価値を創出していくことである。そのために、ビジネスモデルや企業文化などの変革が求められる。

従来のIT化と異なるのは「顧客視点」があるかどうか、ということ。従来のIT化は顧客視点というよりも、自社内の業務の効率化や生産性向上を図り、従業員の業務負担の軽減を目的するものがほとんどです。一方、DXは業務というよりは会社全体の経営戦略に直接関わるもので、IT化はそのプロセスの一部という捉え方になります。極端に分かりやすく言えば、IT化は各現場で考えるもの、DXは経営者が主体となり会社全体で考えるもの、と捉えることができます。

 DX導入時の課題

中小企業がDXを導入しようとする時の課題は次のようなケースです。

  1. DX=AIと捉え、AIを導入することがDXを推進することだと考えてしまう(手段と目的が逆)
  2. 経営者の意識が高くても、他の役員や従業員の理解が得られない(問題意識の共有)
  3. DXを推進しようとしても、会社にそれを実現するための仕組みがない(社内体制)

上記の課題を解決するために、まず行わなければいけないのは経営者がDXに対して正しい知識を持つことです。DXは経営者が主体となり進めるものですので、経営者の意識がズレていると間違った方向に進みます。言い方を変えれば、DXを他人任せにするような経営者の元ではDXは絶対に進みません。

経営者が正しい知識と高い意識を持つことを前提として、それらを社内全体に共有することも大切です。DXは決して各部署に都合の良いことばかりではありません。一時的に業務に支障をきたすようなこともありますし、場合によっては一部の部署の存在価値が下るようなケースもあります。しかし、DXを推進すれば会社全体が活性化し、結果的に従業員にとってもプラスになることを共有しなければいけません。

問題は経営者以外で誰がDXを推進できるのか、ということです。大企業は各部門のプロフェッショナルを集めプロジェクトを組むことができます。しかし、中小企業はそもそも余剰人員が少なくDXを知っている人材はほとんどいません。だからと言って、新たにDX人材を採用する余裕もありません。

中小企業はどのようにDXを推進すればよいのか。次回以降は事例を含めて、具体的なお話を紹介します。

伊藤泰行

京都市在住。 日本ソムリエ協会認定SAKE DIPLOMA(2018年度合格/No.2153)、SAKE検定認定講師。(社)日本ソムリエ協会正会員(No.29546)。大学卒業後は(株)マイナビに入社し約10年間、顧客企業の新卒・中途採用領域における採用ブランディング、クリエイティブディレクションを経験しました。いつまでもお酒が楽しめるように、毎年1回のフルマラソン完走を目標として健康な体づくりに励んでいます。

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