新卒年収1000万円。くら寿司のエグゼクティブ新卒採用とは

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くら寿司にドライブスルーが導入されたという新聞記事を見て、その内容を確認するために同社ホームページを閲覧しました。その時、会社案内のニュース一覧で発見したのが「エグゼクティブ新卒採用」の文字でした。回転寿司らしくない(失礼!)「エグゼクティブ」というカタカナ文字に興味津々。元就職情報会社勤務の僕は早速その募集要項を確かめました。

世界で活躍する。世界を獲る。

この新卒採用は同社の他の新卒採用とは異なり、「世界」というワードを前面に打ち出していることが特徴です。募集背景を見ると、「2030年までの中長期経営計画達成にあたり、優秀な人材を獲得する」と書かれています。その経営計画とは2030年までに①売上高3,000億円、②世界1,000店舗を目指す、という内容です。

くら寿司は1995年に大阪・堺で生まれた会社です。店舗のIT化を積極的に進め、競合他社よりも海外展開のスピードを早めています。現在、海外の店舗は46店舗あります。その中でもアメリカと台湾の売上は好調で、年内には中国初出店となる上海店を開店する予定です。

今後国内市場は頭打ちになることが分かっているため、海外展開のスピードを早めることが必要です。その戦略を理解し、実現するための人材が求められていて、それが今回の「エグゼクティブ新卒採用」なのでしょう。

新卒で年収1000万円

それでは募集要項を見てみましょう。まず年齢は26歳までとなっています。これは大学院修了者を想定しているからだと考えられます。活躍の場が海外ということもあり、英語で論文を書いたり学会で発表した経験など、高いコミュニケーション力を求めていることが分かります。ちなみに語学力の条件はTOEIC800点以上と記載されています。さらに簿記3級以上という条件も。

年収はざっくり1000万円と書かれています。外食産業には初任給が低いというイメージがあるのですが、この金額を見ると明らかに従来の人材とは異なる資質とミッションを求めていることが分かります。ちなみに入社3ヶ月目までは試用期間ということで月額42万円、その後は月額84万円になるようです。

優秀人材の獲得競争は業界関係なく

くら寿司のエグゼクティブ新卒採用の募集対象を見ると、特に外食産業に特化した資質を求めているのではなく、どの業界でも活躍できる資質であることが分かります。つまり、今後は外食産業も大手自動車メーカーや外資系金融、巨大ITなど他業界の企業と人材獲得競争を戦い続ける必要があるということです。

従来でさえ、外食産業は人材確保するのに苦労していました。そのような状態の中で、過去に採用したことがないようなポテンシャルの高いを人材をどのように採用するのか、そして採用後、そのような人材をどのように教育・育成するのか。さらに、回転寿司というビジネスの成長性や可能性を示すことができるのか。

すでに新卒2,000万円という高い報酬を約束する企業も出ているほどです。おそらく年収額では競争することができないでしょう。採用条件以外で人材を惹き付ける方法が、これからの外食産業の採用に求められていると感じます。

伊藤泰行

京都市在住。 日本ソムリエ協会認定SAKE DIPLOMA(2018年度合格/No.2153)、SAKE検定認定講師。(社)日本ソムリエ協会正会員(No.29546)。大学卒業後は(株)マイナビに入社し約10年間、顧客企業の新卒・中途採用領域における採用ブランディング、クリエイティブディレクションを経験しました。いつまでもお酒が楽しめるように、毎年1回のフルマラソン完走を目標として健康な体づくりに励んでいます。

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