飲食店店主は要注意!偽ソムリエが出回っているらしい。

ビジネス

一般社団法人日本ソムリエ協会が発行しているソムリエという資格は多くの人がご存知だと思います。一般的に「ソムリエ」と呼ばれる人たちはこの資格試験に合格し、「ソムリエ」と呼ばれることを認められています。つまり、当協会のソムリエ認定資格に合格しなければ「ソムリエ」とは名乗ることができません。私も一時期ワインの魅力に取り憑かれ、一般消費者でも受験できる「ワインエキスパート」という資格取得を目指しましたが、想像以上の難しさで受験を諦めたことがあります。だからこの「ソムリエ」という上級資格を持っている人たちは多くの時間を勉強に費やし努力してきたのだと思われます。

しかし、最近「偽ソムリエ」が出回っているという情報が当協会のホームページに掲載されています。なぜ偽ソムリエが存在するのでしょうか。

オークションで売買されるソムリエバッジ

ソムリエ試験に合格した多くの受験者は高いお金を払って「ソムリエバッジ」を購入します。ソムリエが常駐するレストランやバーに行くと、ソムリエが葡萄の形をした金色のバッチを付けています。このバッジが「ソムリエバッジ」です。通常、このバッジはソムリエ試験合格者しか購入することができません。ちなみにその価格は認定証とセットで約20,000円です。

この高価で価値のあるバッジが最近はヤフオクなどネットオークションで売買されているようです。ヤフオクで「ソムリエバッジ」を検索してみてください。なんと50,000円以上で出品されています。高いもの(シニアソムリエバッジ)だと10万円以上します。またヤフオクだけでなくメルカリでも売買されているようです。

要はお金さえ払えばソムリエ試験に合格しなくてもソムリエバッジを入手できる状態なのです。仮にそのバッジが本物であるならば、それを売っているのはソムリエ資格取得者本人です。お金に困っているのかもしれませんが、一部の倫理観に欠けるソムリエによって、多くのソムリエの価値を下げるような行為は理解できません。

ソムリエの真偽を見分ける方法

ネットオークションでソムリエバッジを購入した人の中には、そのバッジを使って自らをソムリエと名乗り、飲食店の人材採用に応募するケースがあるようです。正しい知識を持っていない雇用側であれば、バッジを見るだけでソムリエだと勘違いし採用してしまうでしょう。

このような偽ソムリエの中には本物のソムリエ以上にワインの知識がある場合がありますので、ワインの知識で真偽を判断することは困難だと思われます。ただし、偽ソムリエ(ただのワイン好き)は知識が偏っている場合が多いと思われます。本物のソムリエを取得するには情報を網羅的に取得する必要があるため偏りは少ないと思います。

では実際に雇用前の段階でソムリエの真偽を見分ける方法があるのでしょうか。まず必ず行ってほしいことはソムリエバッジだけでなく「認定証」も提出されることです。ソムリエ資格者には必ず認定証が発行されていますので、認定証とバッジをセットで確認しましょう。さらに念を入れるならばバッジの裏面に記載されている「シリアルナンバー」を書き留め、ソムリエ協会に問い合わせ照会しましょう。このナンバーは固有の番号ですので、資格取得者かどうか照会することが可能です。

もし雇用後に偽ソムリエだと分かったら

既に偽ソムリエを雇用してしまった場合、どのように対処すればよいでしょうか。雇用者の中には客にはバレないから継続して雇い続けようと思う場合もあると思いますが、本来持っているはずのソムリエ資格が無い人材に対して、それ相応の給与を払うのは納得いかないでしょう。資格取得手当なんて払っていたら尚更です。

もし採用募集時に「ソムリエ資格取得者」という条件を必須にしている場合、偽ソムリエはこれに該当せず経歴詐称になりますので解雇できる可能性が高いと思われます。要は「ソムリエ資格を持っていないことが採用前に分かっていたら雇用しなかったかどうか」が重要なポイントになります。ですので、今後ソムリエを募集する場合は必ず「資格所持者」であることを明記しましょう。

ただし、偽ソムリエであっても業務上全く問題がない場合は解雇前に条件を出してみてはいかがでしょうか。例えば「次のソムリエ試験に合格したら継続して雇用する」などです。いつまでも偽ソムリエを雇い続けるのは店の品位を下げることでもありますので、条件と期限を決め雇用判断することが大切だと思われます。

 一般社団法人日本ソムリエ協会

伊藤泰行

京都市在住。 日本ソムリエ協会認定SAKE DIPLOMA(2018年度合格/No.2153)、SAKE検定認定講師。(社)日本ソムリエ協会正会員(No.29546)。大学卒業後は(株)マイナビに入社し約10年間、顧客企業の新卒・中途採用領域における採用ブランディング、クリエイティブディレクションを経験しました。いつまでもお酒が楽しめるように、毎年1回のフルマラソン完走を目標として健康な体づくりに励んでいます。

Related Articles

TOP