【BOOK REVIEW】PIXAR<ピクサー>世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話

ピクサー・アニメーション・スタジオと言えば、「トイ・ストーリー」や「インクレディブル・ファミリー」「ファインディング・ニモ」などアニメーション映画で成功した世界一のコンピューター・アニメーション企業として有名です。本書はこのピクサーが生き残りをかけて「トイ・ストーリー」の制作に乗り出した頃から、ディズニーに買収されるまでの約10年間の物語です。

過去の成功を見れば、ピクサーは最初から現在に至るまで順風満帆の経営だと思われるかもしれませんが、1986年にスティーブ・ジョブズがルーカス・フィルムからピクサーを買い取った時はジリ貧の状態でした。当時の社員数は100人前後(現在は1200人)で、社内には非常に優秀なクリエーターが揃っていました。しかし、その優秀な人材を持ってしても、コンピューター・アニメーション作品を1本作るには3年の歳月がかかります。しかも、当時はディズニーと主従関係にあり、ピクサーにとってかなり不利な契約を結んでいました。

このような状況をなんとか変え、自分の持つピクサー株の価値を高めたいと考えたのがスティーブ・ジョブズで、そのお眼鏡にかなったのが著者であり当時弁護士として活躍していたローレンス・レビーです。彼は最高財務責任者としてピクサーに入り、ジョブズと現場の間に入り、最適解を見つけていきます。その過程に関しては本書を読んでいただくとして、結果的にピクサーは株式公開に至ります。現場のクリエーターはそれにより自信と誇りを獲得し、ジョブズはビリオネアになります。

現在、ピクサーは株式公開していません。株式公開後、ディズニーとの関係を修復する過程において、ディズニーの傘下に入りました。ここでもジョブズはディズニーの筆頭株主になり、1兆円以上の資産を築きました。本書はローレンス・レビーが著者ではあるのですが、スティーブ・ジョブズがコンピューター・アニメーションの世界にどのように関わってきたのかという軌跡も表しています。

世界に誇るコンピューター・アニメーション企業がどのように生まれ、どのように育まれたのか。興味のある方はぜひ手にとってもらいたい一冊です。また、企業経営の2番手がどのような存在であるべきなのか、参考になる一冊にもなるでしょう。

ハイライト

文化は目に見えないが、それなしにはイノベーションは生まれない。新しいものを生みだす元は、普通、状況や環境ではなく個人だと考える。そして、その人をヒーローとしてあがめ、そのストーリーを語る。だが、その実、イノベーションは集団の成果である。天才がいなければ生まれないのかもしれないが、同様に、環境が整っていなければ生まれない。活気も大事だ。だから、なんとかしてもピクサーの文化と活気を守らなければならない。

会社というものは生物によく似ている。それぞれ、個性や感情、習慣がある。トップなら好きにできるはずと思うかもしれないが、たいがいは、トップも、変えがたい会社の文化に縛られている。そして、会社は、成功すると保守的になる。創立当初はたしかにあった創造性の炎が、成果を求める圧力で消えてしまう。成功すると守るものが増え、同時になにかを失ってしまう。勇気と恐れに圧倒されるのだ。

どんなことでもそういうものだが、交渉ごとでは、最後の20%に労力の80%を費やすことになる。最後の20%でこまごましたことを決めなければならないからだ。

「トイ・ストーリー」のエンドクレジットには「プロダクション・べービーズ」という項目がある。ここに並んでいる名前は、映画制作中に生まれたピクサー社員の子どもである。次女ジェンナの名前も記載されている。こんなうれしいことはない。

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