新型コロナウイルスの感染拡大を受け、飲食店や小売店など接客を必要とするサービス業は苦境に立たされています。その一方で、今回の影響により「変化」する業界もあります。東日本大震災や新型コロナウイルス感染拡大など社会に大きな変化が伴う時、それを苦境と受け止めて従来通りのビジネスを維持するのか、もしくはそれを機会と捉え新しいビジネスを生みだすのか。こういう時だからこそ、企業の事業スタンスが分かりやすく表面に出てきます。もちろん、変化を求めない業界もあります。まさにインフラ業界がそれで、電気やガス、鉄道や物流などは社会を支える基盤で、そこには変化よりも維持が求められます。
今回ご紹介するのは変化しつつある業界、調剤薬局です。従来、病院で受診した後、処方された薬は病院や自宅の近所にある調剤薬局で対面で受け取る必要がありました。これは一般的な市販薬よりも効果と副作用リスクが大きいため、薬剤師による服薬指導が必要だったからです。しかし、今考えるとその服薬指導は本当に対面で行う必要があるのだろうか、という疑問が浮かんできます。僕の経験だけでも、その服薬指導はほんの数分で終わることがほとんどです。その数分のためにわざわざ調剤薬局まで移動しなければいけません。患者の目的は服薬指導ではなく、薬を受け取ることなのに。
しかし、今回の新型コロナウイルス感染拡大により、この流れが変わりました。これは医師による診察のオンライン化に伴うもので、4月13日からは医師の診断から薬の購入まで初診者でも電話やオンラインで済ませることが可能になりました。これが暫定的な仕組みなのかどうかは分かりませんが、個人的にはせめて服薬指導のオンライン化だけはコロナ収束後も続けてほしいと思っています。
オンライン服薬指導の仕組み
オンライン服薬指導の流れは、まず患者がテレビ電話やオンラインで医師から診療を受けます。その診療を元に医師は処方箋をFAXにて調剤薬局に送ります。調剤薬局の薬剤師はその処方箋を元に、患者とテレビ電話やオンラインにて服薬指導を行います。その後、調剤薬局から患者宛に処方薬が送られてきます。
この流れにおいて患者側のデメリットは何もありません。もちろん電子機器の使い方が分からない高齢者にとっては対面の方が安心だと思いますが、将来のことを考えればオンライン服薬指導をデフォルトにしてしまうほうがよいのではないでしょうか。
オンライン服薬指導が受けられる調剤薬局
便利なサービスではあるのですが、調剤薬局側にも設備投資や社員教育が必要になるため、オンライン服薬指導が受けられる調剤薬局は大手に限定されています。
クオールホールディングス | 全国806店舗にて電話での服薬指導、一部店舗にてオンライン服薬指導を対応 |
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日本調剤 | 全国654店舗にて電話での服薬指導、5店舗にてオンライン服薬指導を対応 |
アインホールディングス | 全国1181店舗にて電話での服薬指導、15店舗にてオンライン服薬指導を対応 |
課題は決済
良い事ずくめのオンライン服薬指導ですが課題も残されています。それは決済手段です。現在は、処方薬を患者に送付する際に銀行振込用紙を同封しています。クレジットカードなどオンライン決済に対応していないのです。外出しなくても済む服薬指導なのに、支払いのために外出しなくてはいけないという矛盾が生まれています。
既に多くの決済代行会社がこのような課題解決の提案を行っていると思いますが、早く支払いのオンライン化も進めてもらいたいですね。