モール出店からD2Cに変化するメーカーのEC戦略

2019年9月13日の日本経済新聞に気になる記事が掲載されていました。それは「企業、ネット直販に軸足」というタイトルの記事です。内容を簡単に説明すると、今まで楽天市場やAmazonなどモール型ECに出店していたメーカー各社が自社ECを構築して直販(D2C)を行うケースが増えてきた、ということです。

D2CとはDirect to Consumerの略で、いわゆる直販のことです。なぜ最近になってメーカーのD2C化が進んでいるのでしょうか?その前にまずはモール出店とD2Cのメリット・デメリットを知る必要があります。日経の記事を元に簡単にまとめてみました。

D2C(直販) モール出店
手数料 必要無し 8〜15%の手数料が必要
集客力 新規顧客獲得コストが高い 新規顧客獲得コストが低い
リピーター 囲い込みしやすい 囲い込みしにくい
消費者ニーズの把握 把握しやすい 把握しにくい
物流面 自前で用意 モールの物流を使える

D2Cの一番のデメリットは楽天市場やAmazonの集客力を生かすことができず、自前で新規顧客を獲得しなければいけないことです。当然、集客するためのノウハウも必要ですので専門人材を雇用したり外部コンサルなどに委託する必要があります。しかし、これは短期的にはデメリットですが長期的に見れば社内にノウハウが蓄積され解決されていくでしょう。

一方でD2Cの一番のメリットは何なのでしょうか。これは今後のビジネスに最も必要とされる「データ収集と分析」が自前で行えるという点です。業種問わず今後のビジネス成功の鍵はデータを資産として蓄積し、それを分析して実際のビジネスに生かすことです。その点において楽天市場やAmazonに依存している限り、満足できるデータ収集は行なえません。時間はかかりますが、D2Cを構築すれば自社のためだけのデータを収集することができます。

中小メーカーもD2Cを進めるべきか

ここで紹介したメーカーのD2Cですが、事例として日経新聞に掲載されているのはマンダムや日清食品、キリンビール、資生堂など大手有名企業だけです。おそらく中小メーカーでD2Cを進めているケースは稀ではないでしょうか。それでは今後は中小メーカーもD2C化を図る必要があるのでしょうか。

僕の答えは「NO」です。中小メーカーのECにおける一番の課題は常に「売上アップ」です。大手メーカーの場合はまだ既存ビジネスが主流でありECはお試し中というケースが多いと思われますが、中小メーカーの場合はそもそもお試しビジネスを行う余裕は無くECにおいても短期的な結果が求められます。実際、多くの中小メーカーが成果が出せず短期間でECを閉鎖しています。だから中小メーカーのECにおける重点施策は「集客」であり、それには楽天市場やAmazonの力が必要不可欠です。

また、D2Cのメリットであるデータ収集・分析においても中小メーカーは時期尚早でしょう。データは大量にあるからこそ価値があります。中小メーカーのECで集められるデータ量ではそれほど価値が見いだせないでしょう。仮に必要不可欠なデータ量が集められたとしても、それを分析する専門人材(データサイエンティストなど)が存在しなければ活用することができません。この専門人材は大手企業でも確保するのに苦労するほどです。中小メーカーがこのような人材を確保するのは現実的に難しいでしょう。またデータ分析を外部に委託する方法もありますが、安くはありません。

今後、中小メーカーはECコンサルタントや制作会社からD2C化の提案を受けるケースが増えると思います。しかし、安易にその提案に乗ってはいけません。D2Cで成功するためには長期的にトライ・アンド・エラーを繰り返すことができる体力と人材が必要です。すぐに売上が欲しいのなら、まずは楽天やAmazonの力を借りましょう。

 

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