AI時代を生き抜くための教育

先日読んだ「人工知能はどのようにして名人を超えたのか」(著・山本一成)には今後のAI時代の到来に向けて人間に求められるヒントが著されていました。それは「知性」であると。知性とは目的(ゴール)を設計する能力です。一方、AIが得意とするのは「知能」で、これは目的に向かう道を探す能力です。ゴールに向かうための最善のプロセスを探す能力と言い換えてもいいでしょう。例えば将棋では王を捕るためのプロセスは何万通りもあり、AIであれば数秒でその答えを導きます。人間よりも圧倒的に優れた能力でしょう。でも、その能力は目的があってこそ生きるもの。最終的な目的は人間が与える必要があります。

今後のAI時代においては、この目的を設計する知性を持つ人材が必要になります。では、このような人材を育て、また自らそのような人材になるにはどのような教育を受ける必要があるのでしょうか。

数学と国語の基礎を学ぶことが大切

多くの人は、AI時代に向けてプログラミング能力が必要だと言います。しかし、プログラミングはそもそも能力ではなく単なるスキル(技能)に過ぎません。重要なのはプログラミングそのものではなく、そのスキルを生かして何を実現するのかという目的づくりです。そして、その実現のために必要なのが国語と数学の基礎です。

現在の日本においてAIの最先端で活躍する人材の多くは大学院(多くの場合博士課程)を修了しています。プログラミングスキルだけで活躍できるのであれば専門学校卒の人材でも十分活躍できるはずなのに、結果的には高学歴な人材ほど最先端で活躍しています。

彼らのような高学歴人材と専門スキル人材の違いは何なのでしょうか。大きな違いとして2つあると思います。ひとつは「国語」の能力です。大学院を修了するには大量の資料を読み、自ら論文を書き(しかも英語で)、さらに自分の研究成果を学会という場で発表しなければいけません。ここで問われるのは物事を読み解く読解力と、それを文章にする記述力。さらに人に伝えるためのコミュニケーション力です。これらの能力がない場合、プログラミングする時に最も重要な仕様書を作成することができません。

二つ目は「数学」の能力です。AI開発を行うためには確率や統計に関する専門知識が必要です。実際、現在のAI企業のトップの多くは情報工学系の大学院出身者ばかり。つまり数字に強い人材が多いということが分かります。この数学の能力は大学院に行ったから身についたものではなく、小学校から高校で習う算数や数学の基礎を身につけていることが前提となります。世の中には数学は苦手だけどプログラミングは好き、という人がたくさんいます。しかし、そんな上っ面だけをかじった人材は今後到底通用しない時代になるでしょう。なんといってもAI競争は世界規模で行われているのですから。

プログラミングはいつでも学べる

現在、子供を対象にしたプログラミング教室が流行っています。これは国語や数学と違って、目的がはっきりしているため子供にも親にも取り組みやすい結果だと考えます。しかし、先ほど述べたとおり、本当に重要な能力は「国語」と「数学」です。プログラミングに時間を割くのであれば本を読む時間を増やすほうが将来のためになるでしょう。

実はプログラミングスキルは学校で学ばなくても身に付けられます。実際、私が普段会う大学院生の多くはプログラミングスキルを持っています。彼らは専門学校に通っているわけではありません。自分の研究を進める手段のひとつとして研究用のソフトウエアが必要となり、それを自ら開発するためにプログラミングを独学で勉強したのだとか。

ではなぜ彼らが専門学校に通わなくてもプログラミングスキルを身につけられたのか。それは国語と数学に強いからです。読解力と記述力はプログラミングにおいて最も重要な要素です。さらに数学の確率や行列などもプログラミングの基本です。だから彼らにとってプログラミングは大して難しいものではないのです。英語も一緒です。彼らは英会話教室に通わなくても英語が話せ英語で論文が書けます。英会話教室に通っても論文を書けるようにはなりませんよね。

結局、何をするにも「基礎」が大切だということです。基礎さえ身に付いていれば、それほど時間をかけずに新しいことを身につけることができるはずです。

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