今後、物販系BtoC-ECの大幅な拡大が見込めない理由

先日、経済産業省がリリースした「平成30年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備 (電子商取引に関する市場調査)」によると、物販系ECの2018年の前年比の数値は8.12%となりました。この数字だけ見ると、まだまだ拡大しているように見えます。実際、2017年の数値が7.45%だったため前年よりも伸長率が高まっています。で、あるにもかかわらず、専門家の間では国内の物販系ECは今後大幅な拡大が見込めないと考えています。その大きな理由は伸長率が緩やかになっているから。従来、この伸長率はずっと10%台を維持していました。しかしここ最近は一桁台に変わっているのです。

なぜ、ここ最近の伸長率は鈍化しているのでしょうか。その理由は3つあります。

① 価格競争が激しくなっている

Cavallo, A (2017) ”Are Online and Offline Prices Similar? Evidence from Large Multi-Channel Retailers” American Economic Reviewがリリースしたネットと実店舗の価格差調査によると、日本の場合、他国と比較して「ネットの方が安い」と感じる消費者が約45%と最も多いことが分かりました。ちなみに英国や中国においては「ネットの方が安い」と感じる消費者は7%前後であるのに対し、「ネットと実店舗が同価格」と感じる消費者は約90%も存在します。

日本の消費者が「ネットの方が安い」と感じる理由として、価格比較サイトなど価格比較がしやすい環境が整っており、それによって実店舗よりも安い価格で販売するECが見つかりやすいためだと考えられます。この状況をEC運営の視点で捉えると、ネットで購入しようとする消費者は増えているものの、それと比例して価格競争も拡大しており、その結果、金額ベースでの伸び率は思った以上に伸びていない、という状態であると考えられます。

このような競争環境においてEC運営に求められるのは、AmazonやMonotaROのように価格競争に巻き込まれず、圧倒的な優位性を獲得することだと思われます。

② 実店舗が充実している

普段、ネットでの買い物が多い人でも感じているはずです。どこに行ってもコンビニとドラッグストア、飲食店が存在していると。実は日本の小売業は、大都市圏だけでなく各地方都市においても生活環境圏内に小売店が充実していることが特徴なのです。しかも、訪日外国人がドラッグストアで爆買いするように、商品の品揃えが充実しています。

このような小売店が私たちの生活動線上に上手く配置されており、商品の特性や価格差、欲するタイミングによっては敢えてネットで購入する必然性がない、と考えるケースがあると推測できます。私自身の購買行動を振り返ってみても、例えば洗剤やシャンプーなどはわざわざネットで購入しません。もしかしたらネットの方が価格は安いかもしれません。しかし、価格以外の理由で近所のドラッグストアで購入するケースが多いのです。

今後、物販系ECに参入する場合は、その商品がネットに向いているのか実店舗に向いているのか、参入前によく考え戦略を練ることが大切です。

③ 消費者の意思決定の多様化

現在でも多くの企業がECだけ、実店舗だけという戦略をとっていますが、Amazonのような先進的な企業はオムニチャネルで展開し始めています。実際、AmazonやMonotaROはECだけでの展開は限定的だと考え、実店舗販売を展開する戦略をとっています。これが何を示すかといえば、消費者の消費行動を特定の購買モデルに当てはめることが難しくなっている、ということです。

特にSNSの影響は大きく、これによってますます消費行動を特定することができなくなっています。多様化する消費行動に合わせることは容易ではなく、だからこそAmazonのような勝ち組企業であっても実店舗販売するなど、常に購買チャネルを模索する必要があります。したがって、現在ECを運営している企業は、今後もネットだけで良いと限定的に考えるのではなく、実店舗も含め、あらゆる購買チャネルを模索する姿勢が求められます。

EC業界に身を置いていると、何かECは特別な購買チャネルだと思い込む人が多いのですが、すでにECは特別なものではなく、消費者にとっては近所のドラッグストアと同じ存在であることを意識しなければいけません。つまり、今後ECを運営する際は、ECだけでなく実店舗も含めた小売業全体の動きを常に把握し、場合によっては自ら新しい購買チャネルを構築していることが必要でしょう。

 経済産業省「平成30年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備 (電子商取引に関する市場調査)」

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